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【 体験実話 】男の不妊治療物語 第一話 | 精子特性分析一回目「卵子に到達できない精子」

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1.

2016年冬。

「率直に申しまして、旦那さまの精子の運動性能ですと自然妊娠の見込みはありません」

診察室に入り医師の正面に着席するなり、僕は担当医師からそう切り出された。

手元に差し出されたその診察データをのぞきこむ。

指をさされたのは、速度が速く直進する精子 4.8%【 正常値25%以上直進】の箇所。

僕はそこに書かれた数値を理解しようと試みる。

「直進する精子の数が圧倒的に少なすぎるのです」

「え、それってどういうことですか」

「旦那さまの精子は今のままですと、卵子に到達できないということですね」

医師は淡々とつづける。

「この数値ですと人工授精も体外授精も時間とお金の無駄になるので、一気に顕微受精に移ることを当院としてはおすすめします」

冷静に宣告され一瞬茫然としたが、このとき、夫である僕の不妊治療がはじまったんだ。

 

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一回目の精子特性検査結果。※転載禁止

 

 

2.

その帰り道、僕は不機嫌だった。

冬の空っ風が冷たく吹きつける吉祥寺の路地のバス停。

なんかとてつもなく自分というものを否定された気分で、その苛立ちを全身に滲ませていた。

そしてこれからかかるであろう治療費を想像すると、先ほどまでとは違う不安に襲われ、不機嫌さが増していった。

あのときのことを思い返すと、僕には反省しかない。

頭にあったのは自分のこととお金のことだけ。

人間としてちっぽけすぎた。

妻はそんな僕の不機嫌さを察し、無言で横に立っていた。

無表情で立っていた。

「不機嫌になってごめん。これから君の方が大変なのに」

小さくつぶやいた言葉。

うなづく彼女。

僕たちはその不透明な苛立ちを、なかなか来ないバスに向けるしかなかった。

 

3.

実をいうと、このとき僕はまだ子供を持つ未来を想像できていなかった。

親になる覚悟とでもいうのであろうか。

そのようなものも僕のどこにもなかった。

あったのは不安だけ。

不妊治療にかかる費用。うまくいかなかった時の彼女との関係性。そしてもし授かったとしても、子供が成人するまで自分が働き稼いでいられるかという不安。

それが現実だった。

30代半ばに離婚した際、その遠因が僕が子供をつくることに非協力的だったこと。

そんなトラウマも蘇った。

 

しかし現実に僕たちの不妊治療はスタートした。

彼女はクリニックに多いときは週3のペースで、仕事のスケジュールを調整しながら通いはじめた。決まった時刻になると、ホルモン剤を飲み、吐き気に襲われ、日に日にその精神状態も不安定になっていった。

あまりにも苦しそうで、そしてそれを表に出さないよう我慢しているのがわかりすぎて、受け止めきれない毎日。

そんな彼女を僕はどう支えればいいのか、正直わからなかった。

身体とこころを擦り減らしていく彼女を笑わせるために僕にできることは、くだらない冗談を口にして気を紛らわせたり、こころに溜まっている話を聴き、一緒に散歩すること。

そんなことしかなかった。

情けないけど、それが僕の現実だった。

 

(つづく)

 

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 (不妊治療中の気晴らしに子宝パワースポット巡りをしたりしていました。)

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