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【 体験実話 】男の不妊治療物語 第四話 | 精子特性分析三回目「顕微授精を開始します」

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男の不妊治療物語 第一話 | 精子特性分析一回目「卵子に到達できない精子」からお読みください。)

 

1.

三回目の精子検査の朝。

僕は気合いがはいっていた。

この日にむけて前回の検査までの反省点を自分なりにまとめ、クリアーしてきたからだ。

「今回こそはいけるはず」

そう思って自ら採取する。

 

前回の精子検査での僕なりの反省点は以下の通りになる。

  1. 朝風呂にはいってから採取した。
  2. 妊娠に必要な栄養素を無視した食生活をしていた。
  3. 晩酌や付き合いでなどアルコールを摂取する日が多かった。
  4. 運動不足だった。
  5. 睡眠不足だった。

 

これらを改善すること約二ヶ月。

結果がでないはずがない。うむ。

特に大好きだった朝風呂には注意した。

男性諸氏なら一度は聞いたことがあり実践したこともあるであろう「金冷法」。

その医学的根拠は皆無らしいが、陰嚢をあたためると精子の運動量などに悪影響を与えるなんて記事を読んだので実践の価値ありと判断し行動に移したんだ。

 

(より詳しく男性不妊について知りたい方は、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学の堀江重郎教授が理事長をつとめている日本Men'sHealth医学会のサイトにある第1回コラム:意外に多い男性の不妊症についてという記事を参考にされると良いと思います。)

 

※精嚢内の精子の入れ替えが二ヶ月半程度のサイクルで行われるという記事もよみ、この期間の長さを一瞬納得したのも事実ですが、これを証明する医学的エビデンスが見つけられなかったこともここに付記しておきます。

 

2.

 この日は妻の採卵の日でもあった。

クリニックに到着し採取した精子を受付に手渡すと、妻は採卵室に消えていった。

この日のために彼女はここ数ヶ月必死に頑張っていた。

毎日二種類のホルモン剤に加え、3月にはいってからは半月で計5度のホルモン注射。二度の採血、そしてエコー。

そんな身体とこころのバランスをとることすら難しい状況下で、片道一時間の仕事にまで行く日々。彼女の努力を間近でみてきた僕にも、この頃になるとようやく強い覚悟がついていた。

 

彼女の採卵は一時間ほどで終わった。

すこし疲れた顔をしていたがホッとしたような様子で僕の隣に腰をかける。

「どうだった」

のぞきこむように声をかける。

「うん、なんかうまくいったみたい。まだ詳しくはわからないけど」

「そか、頑張ってたもんね」

「うん」

周りは診察待ちの患者さんでほぼ満席。

こんなに多くのひとが不妊で悩んでいるんだと毎回驚く。

そんな中、僕らは周囲に気をつかって小声で会話をつづけた。

 

 

3.

「診察室へどうぞ」

廊下の奥の扉が開き、看護師さんが僕らの名前を呼ぶ。

ようやく順番が回ってきた。

今度は僕の出番だ。

期待はずれの結果になっても落ち込まないぞと心の中でそっとつぶやいて、僕は妻と診察室に入っていった。

 

「今回は前回にくらべると良い結果がでています」

着席するなり医師がせわしなさげに検査結果の用紙を机に広げた。

期待して検査結果の用紙に目線を走らせる。

そこにあるのはやはり基準以下の数値。

すこしがっかりした気持ちを隠しつつ医師の言葉を待つ。

「数値自体は基準に達していないですが、顕微授精に必要な精子を採取するには十分な結果がでていると判断できます」

思わず妻と顔を見合わせる。

まだ授精したわけでも着床したわけでもないのに、ようやく最初の一歩を踏み出すことができる。新しい世界のはじまりを感じた。

「また、さきほど採取させていただいた奥さまの卵子の数ですが、予想より多く採取できました。よって本日これから精子を選別し、顕微受精を開始します」

 医師は再度僕たちに視線をくばるとこうつづけた。

「授精の確認は明日にはできますので、明日奥さまあてに成否のお電話を差し上げますね」

「ありがとうございます。よろしくおねがいします」

そして、僕と妻は医師に一礼すると喜びを噛み締めながらそっと診察室をでた。

 

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三回目の精子検査結果。※転載厳禁

 

ビルの外にでると春の風が気持ち良かった。

はじめて精子検査でここに来た時は冬の冷たい風が吹いていたのを思い出す。

ふてくされて不機嫌オーラをだしていたちっぽけな自分を。

あれから四ヶ月。

僕たち夫婦はようやくスタートラインに立てた、そんな充実感に包まれたらなんか無性に腹が減ってきた。

「ね、これからちょっとお祝いランチしようよ」

気持ち軽い足取りで歩きながら彼女に話しかける。

「いいね、わたしお寿司たべたい」

「よーし、行っちゃいますか!」

 

不妊治療は長期戦だ。

小さな成功、小さな失敗を繰り返し進んでいく長期戦だ。

だからたまには贅沢して息抜きしてもいいよね?

でしょ?神さま。

 

(つづく)

 

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