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【 体験実話 】男の不妊治療物語 第六話 | はじめての胚盤胞移植

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男の不妊治療物語 第一話 | 精子特性分析一回目「卵子に到達できない精子」からお読みください。)

 

1.

それから二ヶ月が経った。

その間に桜は散り、ゴールデンウィークも過ぎていった。

なぜ胚盤胞ができてから移植までに二ヶ月も期間が空いたかというと、彼女の卵巣がホルモン剤の副作用で通常の7倍から8倍に腫れ上がっていたため、いったん腫れをひかせる必要があったからだ。

 

胚盤胞が複数できて彼女を精神的に支えること以外にやることがなくなった僕と異なり、彼女は妊娠しやすい身体になるべくいろんなことをしていた。

彼女は再度ホルモン剤の投与(3回/日)を開始したのに加え、妊娠しやすい鍼灸治療なんてものにも通いはじめたが、それはすぐやめた。

その理由は、「あんなもん何もエビデンスのないボッタクリ商売だ」と、それまで行っていた近所の鍼灸のおじさんが言っていたかららしいが、その発言の真偽のほどはわからない。

ただ言えるのはどちらもエビデンスなどないポジショントークだということだけだ。

 

そのくらい妊娠したいという女性のこころは複雑で弱っている。

そしてそこにつけこむ様々なモノが世の中には潜んでいる。

不妊治療にはお金がかかるのだから、決して口コミや体験談などを迂闊に信じることなく、なるべく確かなエビデンスを自分たちで調べてから行動するのが正しい自衛手段だ。

だって、お金の切れ目が治療の終わりになるのだから、夢をかなえるためには節約もまた大切になってくるのが現実だと僕は思う。

 

 

2.

そしてついに迎えた胚盤胞移植の日。

僕たちは施術予定時刻の40分前にクリニックに到着していた。

クリニックからは、移植前に胚盤胞をもどす場所をわかりやすくするためにエコーをするので、「尿をためておいてください」と事前に通達されていた。

が、妻の様子がなんかおかしい。

「どうしたの」

「うん、おしっこ全然でそうになくて」

「わかった、お茶買ってくるよ」

ダッシュでクリニックの近所のコンビニに行き、ノンカフェインのお茶を買ってくる。

焦ってガブ飲みする彼女。

そうこうしているうちに施術予定時刻も30分近く過ぎた。

「遅いね」

「仕方ないよ、混んでるから。それよりも、おしっこしたくなってきちゃった」

「え、やばいね。我慢して、我慢」

そんな会話を交わしていたらようやく僕らの名前が呼ばれた。

そして彼女は施術室に入っていった。

 

3.

僕らが通っていたクリニックはART取り違い防止システムという、精子や卵子、受精卵に培養された胚盤胞の取り違いを防止するシステムを導入している、日本でも数少ないクリニックだった。

赤ちゃんの取り違いはたまにテレビニュースやドキュメンタリー番組などで見る機会があるひとも多いと思うが、体外授精などの場合でも同様なことが起きる可能性は否めない。

僕もここに通いだしてから初めて知った。

そして非常に高く評価した点でもある。

 

※1

ARTに関する定義や質問は、日本授精着床学会の下記のページで知ることができます。

生殖補助医療技術 ART(アート)って何?|日本受精着床学会

 

 

※2

ART取り違い防止システムに関して知りたい方は、下記のクリニックのページでわかりやすく図解されています。

ART取扱いについて | 不妊治療や体外受精等の医療なら吉祥寺のうすだレディースクリニック

 

 

4. 

 胚盤胞移植の施術時間は体感では数分程度で終わったらしい。

なぜ「らしい」なんて言いかたをするかというと、施術室にはいれない決まりだったからだ。

よって、ここからは妻から聴いたことをベースに妻の視点で話をつづける。

 

施術台の上に乗ると、看護師さんがエコーをとるべくお腹をギューギューと力強く押し始めた。

おしっこを極限まで我慢していた私は思わず漏らしそうになる。

視界の先で培養士さんが私のリストバンドのラベルを読み取り、胚盤胞らしきものが入ったものと照合している。

「ああ、これから移植がはじまるんだな」

そんな思いがよぎったのも確かだったが、それよりも移植の際に医師の顔におしっこをかけてしまわないか、そちらの方が気になって仕方なかった。

 

施術自体は数分で終わった気がするが、昔のことなので記憶は定かではない。

ただ、漏れそうなおしっこをしたら、せっかく移植したばかりのものまで流れてしまうのではないかということだけが心配だった。

そんなことはないと説明はうけていたのだが、これ、心配になっちゃうよね?

 

施術後はしばらく安静のために別室で横になった。

急な吐き気などの体調不良にそなえてとのことだった。

そして、心労がたまっていたのか私はいつの間にか寝てしまっていた。

「成功してるといいな」って思いながら。

 

(つづく)

 

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