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世にも奇妙な掃除機のお話 | 俺の屍を越えてゆけと掃除機が俺に語りかけた

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家電の寿命。

それは突然やってきては、僕たちを困らせる。

今回はそんな困った時に起こったちょっと不可思議なお話をしたいと思う。

 

あれはもう4年ほど前の話だ。

僕は再婚にむけ、それまで住んでいたマンションを引っ越すことになった。

そのマンションには実に18年もの間住んでいた。

28歳のとき、当時の同棲相手から家を叩き出された勢いで借りた部屋だったが、利便性に優れていたため、最初の結婚のときもそのまま住み続け、そして離婚してもそのまま住み続けた部屋だった。

そんな若さも老いも、幸せも絶望も、すべてを飲み込んだそんな部屋から僕はついに出ることにしたのだった。

今度こそ新生活を失敗しないために。

 

新居に荷物を運びこんだ後も、僕はその部屋に掃除をしに週一で通っていた。

 

粗大ゴミの引き取りの手はずをし、掃除機をかけ、床を水拭きし、バルサンを炊く。

そんなことを週末の休みのたびにやっていた。

立つ鳥跡を濁さずってやつだね。

 

 

そしてついにやってきた最後の日。

最後の掃除をしようと掃除機のスイッチをいれる。

が、動かない。

「あれ?先週掃除にきたときはちゃんと動いてたのに」

ちょっと焦る。

カチッカチッカチッ

何度も何度もスイッチをいれたり、コンセントを抜き差しするが、やはりウンともスンともいわない。

「この後に及んで壊れたか、二年前に買ったばかりなのに」

こころの中でちょっと毒づいた。

 

その時だ。

こんな声がこころの中に飛び込んできた。

「俺はお前の新しい住処にはふさわしくない。だから行かないよ。お前のこれまでの荷物は、俺がここで吸っておく。だからお前は、俺の屍を越えてゆけ」

ま、もう四年も前の話だし、嘘みたいな話なんだが、確かにそんなことを言われた気がしたんだ。

そして思った。

「こいつ、また重たいもの吸い込みやがって」と。

 

その日のことを、僕はこんな風にフェイスブックに記している。

そのくらい衝撃を受けたんだ。

 

18年。
28歳から46歳。
普通ではないモラトリアム。
歩み出そうとしても、それを阻害する人生の迷い。甘え。重し。
すべてを片付け、ようやく前を向く。


床を一拭き、一拭き。
波のように打ちては返す脳裏の映像。
それをも一拭き、一拭き。
消してゆく。

 

何千回も目を覚ました部屋。
何千回も眠りについた部屋。
何千回も嫉妬に狂った部屋。
何千回も希望を捨てた部屋。
何千回も涙枯れ果てた部屋。

 

ありがとう。
さようなら。

すべてを飲み干して、俺は進む。

あばよ

 

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 (by イクジー48の中身の人のFacebookより)

 

 ま、こんな与太話、信じるか信じないかはあなた次第だ。

だが、家電がその役目以上のものを果たすために命を燃やす。

そんなロマンティックなオカルトがこの世にひとつくらい存在したっていいじゃないか。

世界はきっと、そんな奇跡でまわってるんだからさ。

そしていつかは、あなたもこんなことを体験するよ、きっと。

  

ほいじゃ、今日はこんなところで。

See You!

 

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