イクジー48

こどもと一緒に成長してゆくブログ。

子役オーディション攻略法 | オーディションの現実と現場スタッフが見ている審査ポイントをリアルに解説します

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赤ちゃんが生まれると「あー、なんてかわいいの、この子は」と、すべての親が思うことでしょう。

そしてその中には

「赤ちゃんタレントにしたい!」

「子役にしたい!」

なんて野望を胸に抱く方も少なくありません。

 

今回の記事は、そんな未来のステージママに向けて、TV-CMの子役オーディションの現実と、どのようなポイントで審査されているのかを現場からの生の声でお伝えします。

 

プロフィール - イクジー48

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まずは親であるあなたが、CMの世界の現実を知りましょう。

普段あなたが何気なく見ているTV−CMですが、その制作過程は非常に複雑なものです。

特にお金の面から見ると、15秒から30秒のCM制作費に数千万、テレビに流す媒体費に数億が当たり前の世界ですので、クライアントとなる企業の目も、すべての工程においてシビアになって当然ですね。遊びで数億の金を出す組織やひとなんてどこにもないのです。

 

あなたがこどもをオーディションに送り出す先は、そのような世界です。

まずは、そこを大人として認識してください。

決して、楽して大金がはいって人気者になれる世界ではないのです。

 

しかし、出演が決まり、撮影し、それがオンエアされたときの喜びは何物にも変えられないものがあります。一生の思い出になりますし、なによりこどもの可能性を拓くことができるかもという期待感をもつことができます。

 

オーディションの現実は否定体験の連続。

子役のオーディションに限らず、

オーディションとは否定体験の連続になります。

 

わかりやすく例えるならば、就職活動と似ています。

「わたしの何がいけなかったんだろう」

「今回はうまくいったと思ったのに」

そのような精神的ストレスから鬱になり、業界を去っていくモデルは後を絶ちません。

 

僕は個人的には、こどもを子役にするのはあまりお勧めしません。

その理由は、こんなストレスフルな体験をこどもにさせる必要は全くないと思っているからです。特に子役はギャラも安いですしね。せっかく仕事を勝ち取っても、それまでのストレスに見合った代償はないと言ってもよい世界です。

 

それでもあなたは、こどもを子役にしたいですか?

 

 そういう方は、これから書く「子役オーディション攻略法」を読み進めてみてください。少しは参考になるかとおもいます。

子役オーディション攻略 その1

→子役オーディションで自分のこどもを審査するひとを知ろう。

 

孫氏の兵法の名言でこのようなものがあります。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず

by 孫氏

意味はご存知だと思いますが、「敵と味方を知れば戦いに勝てる」という意味です。

これをこのケースに置き換えると、敵=オーディションの審査をするひとたち、味方=お子さまと親御さんである貴方になります。

 

そこで、まず、どのようなひとが実際のオーディションの現場にいるのか、説明していきましょう。

 

CMには数多くのスタッフが関わりますが、撮影現場の中心になるのは演出家(ディレクター)となります。

演出家はプランナーが立案しクライアントが承認した企画を、より魅力的に表現するのが仕事です。

演出家は仕事をうけるとプランナーの立案した企画コンテに演出プランを盛り込んだ演出コンテを作成します。それに代理店およびクライアントがそれにGOサインが出すことで、はじめてそのTV−CMが正式に制作開始となるのです。

 

で、演出家という人種。

自分で言うのもなんですが…とにかく癖がつよい!

で、他に居並ぶ面々も、負けず劣らず癖がつよい!

 

CMの子役オーディションで、あなたのこどもが対峙するのは、このように癖の強い演出家を中心に、 CM制作のトップであるクリエイティブディレクター、プランナー、コピーライター、プロデューサー、そしてクライアント企業の担当者が中心となります。そしてその誰もが「失敗が許されないピリピリ感」を笑顔の裏に隠しもって座っています。怖いですね(笑)。

 

子役オーディション攻略 その2

一番みられているのは目的の演技ができるか、否か。

→ CMにおいて子役に求められる演技の要素は7つ。

→基本は笑顔。これが勝負を決める。

→笑顔が苦手なお子さまは、表情のギャップで勝負しよう。

 

CMにおいて子役に求められる7つの演技要素。

CMにおいて子役に求められる演技の幅はそう多くはありません。

具体的に書くと

  • 笑う(笑顔)
  • 泣く(泣き顔や悲しい顔)
  • 走る
  • 遊ぶ
  • 歌う踊る
  • 特定のスポーツをする
  • 特定の楽器を演奏する

以上の7項目に、基本は集約されます。

もちろん、芦田愛菜ちゃんや鈴木福くんのような主役級の子役はこの範疇にはいりませんが、あのようなモンスタークラスの子役になるタレントも、最初はみんなと同列のオーディションに参加しています。

 

基本は笑顔。これが勝負を決める。

上の7項目の中で、もっとも見られる頻度が高いのは、なんと言っても笑顔です。

自然な笑顔。

あざとい笑顔はダメです。自然な笑顔です。

これさえできれば、オーディションの第一審査はだいたい生き残れます。

 

CMの表現は、基本、明るい未来をお客さまに提示する(ベネフィットといいます)ことをラストの方にもってくる構成パターンが多いです。

「おいしい笑顔」、「楽しい笑顔」、「うれしい笑顔」。

 

どうでしょう?

あなたがテレビでみるCMのほとんどが、そんな表情で終わってませんか?

その理由は笑顔=ユーザーの明るい未来を提示しているからです。

 

自然な笑顔というのは非常にむずかしく、特に子役オーディションにおいては、緊張や人見知りなどから「うまく笑えない」お子さまも多いです。でも、それは仕方がないことです。だって、まだ子供ですもの。

まわりに怖そうな知らない大人がいっぱいいるんです。僕だって審査される側にたったらカチンコチンになりますよ。審査する側もそう思ってみています。だから、もしうまく笑えなくても決して怒らないでください。

より萎縮し、固まった笑顔がはりついてしまうかもしれません。

 

「あー、うちのこ、笑顔苦手だからダメだわ」

そう思われた方は、まだ諦めないでください。

勝負のパターンはひとつじゃないんです。

 

笑顔が苦手なお子さまは、表情のギャップで勝負しよう。

子役に求められる演技要素のうち、次にむずかしいのが「泣き顔」です。

泣くシーンで涙を流すのは、大人の演者でもむずかしいので仕方ないことでもあります。

 

僕の経験した仕事の中だと、日本アカデミー賞助演女優賞を受賞した女優さんを主演とした短編を撮っていたとき、彼女は「ちょっと待ってください」と言った40秒後に見事涙を流しはじめる演技をしてくれて、現場モニターみていたみんなが驚いたものです。なぜなら、普通の演者さんたちは目薬を使うのが普通だからです。

 

そのくらい「泣く=涙を流す」のはむずかしい演技なので、これができる子役はだいたいがスターダムにのしあがります。

 

CMに限定すれば、泣き顔の演出というのはあまりありませんが、

「悲しい顔」「落ち込んだ顔」というのはニーズの高い演技です。

なぜなら「悲しい顔」から「笑顔」になるだけでストーリーができるからです。

 

ここで、

「笑顔」がちょっと苦手な子にもチャンスがでてきます。

 

ひとつ例をあげてみましょう。

 

みんなでサッカーしている様子を眺めている少年がいます。

少年は仲間にはいりたいけど言い出せない。

地面に顔をむけ、うつむいています。

そこにボールが飛んできました。

ボールを拾って、顔を上げる少年。

少年を呼ぶこどもたち。

恥ずかしそうな笑顔を浮かべながら、少年はみんなに駆けよる。

 

こんなシナリオ、よくみかけますよね?

 

この中で演出的に大切なのは、うつむいている時の悲しい顔と、みんなに呼ばれたときの笑顔の「ギャップ」になります。

CMやミュージックビデオなどの場合、ドラマや映画と違って子役の登場する時間は非常に短いです。その中で存在感を出すのは「表情のギャップ力」となります。オーディションでもこのポイントを重視します。

 

そう、重要なのは「表情のギャップ」なんです。

 

なので、「うちのこはカメラの前に立つと笑顔がかたくなっちゃうんだよな」と嘆かれている親御さんは、悲しい顔のつくり方をこどもと一緒に練習するとよいかもしれません。そして、うまくできたら笑顔で「ちょーいいね、今の演技」と褒めてあげましょう。お子さまはきっとうれしくなって自然な笑顔をあなたに向けるはずです。

 

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最後に。

最後に、秋元康さんの名言でこのページを締めたいとおもいます。

 

人を説得するということは人をだますことではない。

自分だったらどうするかということを、相手の立場に立って考えることである

 ( by 秋元康 )

 

 秋元さんもおっしゃっていますが、まず相手の立場にたって物事をみるということが何事においても大切です。

この記事もそのような観点から、オーディションを審査する側からみて、なにが重要かを理解してもらうことで、オーディション攻略の糸口にしてもらいたい。

そんな想いで書き始めました。

 

実はまだまだ語り足りないので、つづきを書きたいとおもいます。

次回は具体的で簡単な悲しい顔のつくり方や、プロデューサーの友人にヒアリングしたプロデューサー視点での審査ポイントなども書きたいと思いますので、楽しみにお待ちいただけたら嬉しくおもいます。

 

それでは、また会う日まで…

See You!