渡部が通うくらいうまいトンカツ
昼飯抜きのロングミーティングほど憂鬱なものはない。
14時半。
ようやく打ち合わせを終えた俺たち四人は閉店30分前のとんかつ檍(あおき)の行列に並び、ギリギリ滑りこむ。
行列に並びながら、「どんなトンカツなんですか?」と仕事仲間に聞かれたので「渡部が通ってるくらい美味い店だよ」とすごく雑な説明をすると、みんなのテンションがあがる。
ま、そのくらいシンプルな説明の方が話は伝わるって典型だな。
で、ようやく店にはいるとテーブル席に着席し、乾杯してからカツをつまむ。
ここのカツは毎度のことながら脂の旨さが半端ない。
サクサクの衣と厚みのある肉の一体感。
歯で噛み切ると口の中に一瞬にして広がるその旨味と肉汁に、ガツンとやられ脳みそが震える。
それらを十分口の中で味わいながら一気にビールで流し込む。
ビールの苦みで甘くなった舌を洗いながす。
「うまーい!」
みんなが声をあげてパクつくのを見てさらにニヤニヤする。
そうそう、うまいんだよ、ここのカツはさ。
あなたは塩派?ソース派?
塩は四種。
ボリビア岩塩、アンデスの紅塩。
ペルー岩塩、インカ天日塩。
モンゴル岩塩、太古からの贈り物。
そしてパキスタン ヒマラヤ岩塩、ナマック。
好みは分かれるが、個人的にはボリビアの紅塩推し。
これが一番、脂の旨味を引き出す。
「通はトンカツを塩で食べる」なんて20年前に目黒のとんきで先輩に講釈たれられたとき「けっ、トンカツはソースだろ、このトンカツ痛め」と心の中で毒づいたもんだが、時の流れはひとの味覚をも変える。
だからあえて君たちにも教えておこう。
「通はトンカツを塩で食べるんだよ!」
でも、やっぱりガッツリとソースで食べたくなるのも人情だ。
だから結局半分はソースで食べる。
すると思う。
「やっぱトンカツはソースに限るぜ!」
そうそう、好きに食えばいいんだよ、トンカツなんてさ。
有名店だろうがなんだろうが気取って食うもんじゃない。
そしてゴロゴロ大根が自慢の具沢山な豚汁をすすりながら、シメの飯に向かう。
シメはソースキャベツのせご飯で決まりだろ?
シメはやっぱり、ソースキャベツのせご飯。
これしかないだろ?
シャキシャキのキャベツの千切りにトンカツソースをぶちまけて、茶碗の上にのっけて食べる。
キャベツのシャキシャキ感とご飯のもっちり感が奏でる食感のハーモニー。
米とキャベツの甘みがソースに絡み、かすかに感じる肉の脂身の香りが鼻に抜ける。
極上のシメご飯とはこのことだ。
あー、食った食った。
今日も幸せ!
ごちそうさまでしたー!
(記事中で紹介したアンデスの紅塩はこちらになります。画像をクリックするとAmazonの購入ページに移行します。)