ミシュランの星を獲得している名店
「うまいとんかつは'辛子醤油'で食うんだよ」
こんなことを言われても、あなたは信じられるだろうか?
しかし、これは本当なんだ。
東にうまいとんかつ屋があれば行って塩で上品に完食し、西に老舗のとんかつあればソースでガッツリと食べてきた俺だが、この店のとんかつだけは醤油で喰らう。
その店の名は、とんかつ まさむね。
赤坂溜池のビジネスマンたちに愛され、ミシュランの星も獲得しているとんかつの名店だ。
まさむねの行列とかわいい看板娘
夜八時。
近場のプロダクションで編集を終えた俺は一緒に仕事をしている若い子とふたり、まさむねの行列に並んだ。昼飯時はちょっとためらうほどの行列のこの店だが、夜になると若干その数が減る。
「ごめんなさい。今日はもう上ロース、特ロース、カキフライ、カレー、売り切れです」
店主の娘さんらしき可愛い女の子が、外に並ぶ俺たちにすまなそうに頭をさげメニューを渡してまわる。
「仕方ないな、じゃ、肩ロースでいこっか」
「そっすね、メンチも食べたいとこですが」
「いいねぇ、じゃ、メンチは単品でつまみにしよう」
それにしてもここの看板娘は本当にかわいい。
どのくらいかわいいかと言えば、「AKB48にいた峯岸みなみをよりスタイリッシュに、かつ細身にしてスタイルを良くした感じ」とでも言えば伝わるだろか。
連れとそんな会話をしながらも腹が鳴る。
あー、早くとんかつ食いてえ…
まさむねのメンチカツは、まるで揚げたハンバーグ
店内に入る。
まずは軽くビールで喉を潤していると単品のメンチカツが運ばれてきた。
このメンチカツ。
名前はメンチカツだが、その中身はメンチカツでない。
その圧倒的な肉感は、まるで粗挽きハンバーグのごとし。
メンチ自体に味付けされたハーブとレモンの風味が、そのボリューミーな食べ応えに南仏の風を添える。
そして、それをビールで流し込む。
「うめええええ」
思わずうなる、喉が鳴る。
まさむねの肩ロースは、まず辛子醤油で食す
→とんかつなのに上質なお刺身みたいな食感と味
そしてようやく、お待ちかねの肩ロースがテーブルに並んだ。
店のおすすめの食べ方もあるが、ここは'とんかつ道'という修羅の道を歩み続ける俺の食い方を信用してくれ。
「うまいとんかつは'辛子醤油'で食うんだよ」
【 俺流:まさむねの肩ロースを満喫する食べ方 】
1.ど真ん中のカツAの肉面に辛子をタップリと塗ってから醤油で食べる。
2.真ん中脇のカツBの肉面にレモンを絞ってから醤油で食べる。
3.真ん中脇のカツCの半分は塩で、残りの半分は再度辛子醤油で食べる。
4.最後に両脇のカツDとEにソースをかけて、とんかつオンザライス!!
まずは手順通りに、ど真ん中のカツに辛子をたっぷりと塗りたくってから醤油につけて口に運ぶ。で、毎度驚く。
食感、そして味が、
とんかつなのにお刺身みたいなのだ。
しっとりと柔らかい口触りに、うっすらと、本当にうっすらと美味い脂の旨味が乗っている感覚。それはとんかつの常識をブレイクスルーした新世界を、俺たちの舌に見せつける。
ほんと、マジでうまい。
「いくら食べても胃もたれしないっすね」
連れもパクつきながら生意味なグルメレポートをしてきたが、そんな不思議なとんかつなのだ。
そして何よりも不思議なのは、醤油・塩・ソースなど、つける物によって肉の感触に変化が生まれることだ。
だから、とんかつ特有の飽きが来ない。
だから、最後までその美味さを堪能できる。
締めはソースで、とんかつオンザライス!
ここまでは上品な食感の驚きを堪能してくる訳だが、最後はやはりソースでガッツリとかっこみたい。
そしてソースで味わうべき両脇のカツは、これまた不思議と刺身からとんかつの食感へと変化している。その千変万化は、少年のこころを忘れない大人たちを魅了する。
ソースをかけたとんかつを、新潟県佐渡島産の「こしいぶき」を固めに炊いたご飯の上に置いて、かっ喰らう。
通称、とんかつオンザライス。
脂と米と肉とソースの旨味が口の中で混ざり合い、一体化し、細胞レベルで喜びに震えてしまうその破壊力を、赤味噌がちょっと強めの合わせ味噌がうまい豚汁で、腹の底まで一気に流し込む。
「うめえええええ」
声にならない声が脳内に響く。
ま、こんなとんかつだが、機会があったらぜひ食べてみてくれ。
そしてその時、ひとりの名も無きとんかつ好きが、その修羅の道の果てにみつけた「まさむねの肩ロースを満喫する食べ方」を思い出して欲しい。
さすればキミも、この驚きのとんかつ体験を共有できるだろう。
(お店のHPはコチラ↓です。食材へのこだわりなども書かれています)
(とんかつに関連する記事は↓コチラになります。)