藤原伊織の、ひまわりの祝祭を再読。
主人公は広告代理店の元売れっ子アートディレクターでいまはニート。
自殺した妻の死をきっかけに世の中とのつながりを一切断つ。
貯金を切り崩しながら暮らすその主人公が、ある日、かつての同僚の訪問を受け、望まない事件に巻き込まれていく。
ファン・ゴッホの幻のひまわりを軸に、妻の自殺の真相を追う主人公、そして芸術作品と金にまつろう組織や人々の思惑が描かれてゆく。
文体は重い。しかし、美しい。
コピーライター出身らしい言葉の紡ぎ方にページをめくる手が止まらない。
藤原伊織の選択する語彙の並びが、音階やリズムとして脳内に刻まれてゆく。
正直、構成としては浅い作りのところも多々ある。
都合よすぎる展開も随所に見受けられる。
伏線を回収しきれていない場面も多い。
だが、ハードボイルドエンターテイメントとして、主人公の物悲しい怨念が、中盤以降のジェットコースターな流れの中で、淡々とリズムを刻むのが心地よい。
最後に主人公、そして作者は、読者に問いかける。
「ひとを動かすものはなにか?」
俺を動かすものは何だろう。
愛?金?自尊心?絆?
言葉にするとすべて安っぽい。
安っぽすぎて、うんざりしてきた。
そんな安っぽい俺をのせて、電車は走る。
車窓からぼんやりと外を眺めていたら、なんか現実感がなくなってきた。
やっすいな、ほんと。
ま、そんな夜。
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