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【 書評コラム 】エンジェル 石田衣良 | 切なさの果てに希望があるか、自問する

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ほんと疲れたわん。

頭も腰も背中も悲鳴をあげてる。

そんな中、電車の中で、石田衣良のエンジェル、読み終える。

これ、実に面白い。

 

あらすじは、殺され幽霊となった主人公が過去から現在へ、愛する者を守りながら自分を殺した真犯人を追いかけるという幽霊探偵物語だが、その面白さにほんと脱帽した。引き込まれた。

まず、登場する幽霊一人一人に特殊能力があり、その能力を特訓する設定が興味を引く。

死後も現実も同じ世界線で動いているその世界観は、幽霊ひとりひとりに親近感を覚え、作品への没入感を加速させる。

 

そして作者特有の語彙の豊かさ、優しさ。

プロットの練り込みに柔らかい視点。

石田衣良の作品の中では、東京DOLLや40並みに好きな作品となりそうだ。

 

特にゲームオタクとして長年生きてきた俺としては、作品中にでてくるゲームの描写ひとつひとつに懐かしさを覚え、そして、葛藤のあった父との関係の結末にもまたグッときた。

 

石田衣良はとあるエッセイでこう言っている。

「誰かの真似じゃなく、自分らしい作品を、これからのひとには書いて欲しい。そうじゃないと、デビューできても食べていけないから」

俺は作家でもなんでもない雑文の書き殴りで若干の糧を得ている面もあるが、こころに刺さるね。俺の文体は、どこかで見たことのある、読んだことのある文体、そのものだもんな。

 

そういえば、一年前の冬、コピーライターの赤城さんも打ち合わせの席でこう言ってたな。

「そのコピーは自分にしか書けないコピーなのか」

実に染みる。

何にでも言えることだ。

 

その写真は自分にしか撮れないものか。

その企画は自分にしかできないものか。

その演出は自分にしかできないものか。

その仕事は自分にしかできないものか。

 

一流のひとたちは、みんな、それを持っているな。

改めてそう思うよ。すげーよな。

 

俺は、これから、何を書いていこう。

何を書きたくなるんだろ。

何を撮りたくなるんだろう。

残された時間は、あるようでないんだにゃん。

広がる背中の痛みにすべてのやる気を奪われながら悩む、そんな夜もある。

本業も頑張りながら、諦めずに、せっせとやるしかなさそうだ。

 

孤独に生きていた主人公が大切なモノを守ろうとがむしゃらになってる姿を、いまの自分に投影して、最後は切なさのあまり涙こぼれた。

 

ま、そんな夜。